TOPページ>ピーターラビットINDEX>大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館>クリスマス特別企画展「ビアトリクス・ポターが描いたクリスマスの風景展」レポート
2006年4月に、埼玉県こども動物自然公園内にオープンしたばかりのビアトリクス・ポター資料館で、クリスマス期間限定の特別展「ビアトリクス・ポターが描いたクリスマスの風景展」が開催されました。 開催期間:2006年11月14日〜12月24日 ビアトリクス・ポター資料館前には、1F部分と同じ高さのクリスマスツリーがお目見えしました。クリスマスツリーの飾りつけはシックで、とてもシンプル。でもその方が資料館らしいクリスマスという雰囲気でいいですね。 入り口はいったすぐのところに、ポターの描いたクリスマスカードが展示されています。 館内で額装され展示されているイラストは、この特別企画展のために製作された複製です。オリジナルではありませんが、ポターが描いた絵本以外のイラストが、それもクリスマスにちなんだものだけでもこんなにたくさんあるという事実に、まずは驚かされます。 ビアトリクス・ポターが23歳の1890年、当時16ポンドの印刷機が欲しいと思ったポターでしたが、購入するお金は持ち合わせていませんでした。そこで6枚のデザイン画を描き、5つの出版社をリストアップし、自ら描いたデザイン画を採用してもらおうと出版社に送りました。 ポターの弟バートナムが、直接出版社に出向きデザイン画を送り届けた、ヒルデスハイマー・フォークナー社で採用してもられることとなり、その報酬は6枚で6ポンド。当時のデザイン画の相場からは信じられないぐらいの高値で、さらにその後も何枚かのデザイン画を買い取ってくれました。1902年ポターの絵本『ピーターラビットのおはなし」が出版されてましたが、1冊1シリング、1ポンドあれば絵本が20冊購入できる計算です。 これは、1901年製の1シリング。今ではもう流通していない貴重なもの。こちらも展示してあります。 その当時、ポターが飼っていたうさぎは、ベンジャミン・バウンサー。6枚のデザイン画も、飼っていたうさぎのベンジャミンがモデルになったそうです。6ポンドを手にしたポターがまず最初にしたことは、ベンジャミンにモデルのご褒美として、麻の実をカップ一杯あげたことです。 このように、最初に世の中に出たポターの作品は、絵本ではなく、ヒルデスハイマー&フォークナー社から発売になったクリスマスと新年用のカードだったのです。その後、ヒルデハイマー&フォークナー社から出版された、フレデリック・E・ウェザリーの詩集「幸せな二人づれ(A HAPPY PAIR)」の表紙と挿絵としても採用されました。 この時描いたクリスマスカードはどのような絵柄だったのか。どうぞじっくりとご覧ください。 クリスマスにちなんで、ウェッジウッドのクリスマスプレートも展示されています。23枚すべてのプレートを飾っていただきたいところでしたが、今回はよりすぐりの10枚をピックアップして展示していただきました。 すべてのプレートに、絵柄の説明を書き加えました。それぞれを見比べながらご覧ください。 こちらは、ビアトリクス・ポターが描いた水彩画、中でも冬の景色を描いたものがピックアップされ、紹介されています。クリスマスイベントのタイトルにもあるように、「ビアトリクス・ポターが描いたクリスマスの風景展」というのは、ここに由来しているようです。 ポターの描く景色は、その色の鮮やかさ、特に緑が美しく表現され、英国の長く厳しい冬の後に迎えた喜びに満ち溢れています。しかし、今回は冬の景色、絵筆を持つ手がかじかみながらも描ききった秀逸な作品ばかりです。でもこの厳しい冬があるからこそ、美しい春の色彩へとつながっていくのでしょう。 ポターは、絵本の挿絵以外にも、多くの水彩画を書き残しています。これらのオリジナルの原画は、英国のヴィクトリア&アルバート美術館のナショナル・アート・ライブラリーにて保管されているそうです。 ビアトリクス・ポターの作品の中でも、最もクリスマス色の強い作品が『グロースターの仕たて屋』です。クリスマスを迎える夜には、不思議な出来事が起きるのです。どんな不思議なことが起きるのかは、閲覧室にある絵本で実際に読んでみてください。 ここでは、そんな『グロースターの仕たて屋』の舞台となった、英国グロースターの町の紹介や、ビアトリクス・ポターとネズミについての興味深い学生さんの研究内容が紹介されています。 閲覧室の棚には、ポターの作品がすべて閲覧できるようになっています。 こちらは、「うさぎたちのクリスマスパーティ」として、ビアトリクス・ポターの叔母ルーシー・ロスコウにプレゼントされました。「arrival」、「meal」、「after the meal」、「departure」の4枚)。 晩年、「dancing」、「playing」の2枚が追加されましたが、その頃ポターの目はほとんど見えておらず、色の識別が困難だったそうです。そこで、アメリカのヘンリー・P・クーリッジがポターの線画を完成させたそうです。 4枚のイラストは物語になっています。叔父のサー・ヘンリー・ロスコウも、叔母のルーシーも、ポターの描く絵の熱烈なファンだったそうです。なによりのプレゼントになったのは間違いないでしょう。 今回の企画展は、大東文化大学の学生たちが中心となって、これまでの研究の成果を発表しています。ポターの研究熱心さが学生たちの心の中に灯り、知られているようで意外と知られていないような事実を発掘しながら、あますことなく文章にまとめたと伺っています。そのようなところにも着目し、展示物をご覧いただければ、より一層のこと楽しめるのではないでしょうか。 館内のあちらこちらに飾られているクリスマス・ツリー。ここではどうしてクリスマスにクリスマス・ツリーが飾られるようになったのか知ることもできます。クリスマス本来の過ごし方は、本や聖書を読みながら、友と語らい静かにクリスマスを迎える、そんなクリスマスを資料館の資料を読み解くことにより迎えられそうです。 館内のあちらこちらに、英国の湖水地方にあるビアトリクス・ポターが愛したお屋敷ヒルトップにちなんだものが展示されています。この階段は、ヒルトップにあるその通りに再現され、また竹で作られたカーテンレールも、ヒルトップをイメージして製作されたものだとか。 館内に展示してある展示物についてはもちろんのこと、これらの装飾品についても質問したら、ひとつ、ひとつ丁寧に館内の職員さんが答えてくれます。ぜひ、つきることのないポターの世界に足を踏み入れてみてください。 (2006.11.17 レポート作成: ラピータ 撮影協力:PETER GARDEN) 関連サイト:埼玉県立こども動物自然公園 http://www.parks.or.jp/sczoo/ 大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館 http://www.daito.ac.jp/potter/ |
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