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大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館 クリスマス特別企画展
「キノコ研究者としてのビアトリクス・ポターとイギリスのクリスマス」

2009年11月17日〜12月25日
 
企画展の案内チラシ 表(左) 裏(右)

  
 11月17日より、ビアトリクス・ポター資料館にて、開催されたクリスマス企画展「キノコ研究者としてのビアトリクス・ポターとイギリスのクリスマス」。訪れたこの日は、森の教室で植木ゆり&かなで隊の音楽演奏会が開催されるという日でした。

  
 資料館の入口を入ったすぐに飾られたクリスマスツリー。バラとシルバーのリボンをあしらった飾りつけがとても華やかでした。
 「ビアトリクス・ポターとキノコの研究について」と題された展示は、右上の写真の左の展示より順に紹介します。

  
 写真左: 1884年、ビアトリクス・ポターの祖母ジェシー・ポターよりプレゼントされた「British Wild Flowers」の書籍(写真右側緑色の表紙)。この書籍は、英国の野花が描かれた図鑑で、見開きに祖母直筆のサインがあり、その写しが拡大され写真左中央に。奥のレプリカ作品は、上 「?」 、下 「カラカサタケモドキ」1893年9月ダンケルドにて。

 写真右: 湖水地方アンブルサイドにあるアーミット・ライブラリーは、ビアトリクス・ポターが描いたキノコの作品のそのほとんどが収蔵されています。「A Victorian Naturalist」の書籍(写真右側)は、これらアーミット・ライブラリーの作品についてや、ポターとの関係などが紹介されていました。

 また、ビアトリクス・ポターが、キノコの研究に没頭したきっかけとして、スコットランドのダンケルドにあるダルガイズ荘で過ごしていた頃、郵便配達人チャールズ・マッキントッシュと知り合ったこと、彼がアマチュアの博物学者としてキノコの知識が豊富だったことなどのエピソードを紹介(写真左下)。奥のレプリカ作品は、上 「?」、下 「ハイイロシメジ」1893年11月。

 
 ビアトリクス・ポターは、キノコへの興味から、やがてチャールズ・マッキントッシュという共通の話題を高めあうことのできる出会いを経て、さらには科学者である叔父のヘンリー・ロスコーが支援してくれることにより、キノコ研究者への道を突き進み、「ハタラケの胞子の発芽について」という論文を作成するに至ります。が、女性であるがゆえに挫折を受けることになるのです。

 「Beatrix Potter The Unknown Years(写真右下)」Elizabeth Battrick(著)は、ビアトリクス・ポターがキノコの研究者となり、挫折するまでの知られざる日々のエピソードを紹介した冊子です。奥のレプリカ作品は、左上 「シロエノクギタケ」1894年8月18日、左下 「ベニテングダケ」 1890年頃、 右上 「カラカサタケ(左) シワカラカサタケ(右 1893年10月)」 右下 「ガンタケ(左 1893年8月) エノキタケ(右 1892年)」

 
 左下から、「幼少期のスケッチ」は、1875年8歳の時に描いた作品。「ポターがスケッチを始めた背景」と題された解説には、父親ルパートの影響と、その時代の家庭環境の中で、ごく限られた人たちの接触しか許されず、動植物への感心が自然と高まっていくという内容。

 中央下にあるのは「昆虫のスケッチ」。作品は、様々な昆虫のスケッチと、チョウの羽を顕微鏡で観察しスケッチしたもの。「ポターの優れた観察力」と題された解説には、その細部にまでこだわる観察力と、卓越した描写力について触れ、『のねずみチュウチュウおくさんのおはなし』に登場するたくさんの昆虫について、さらに作品の裏話として、作品に登場するはずだったワラジムシ、ハサミムシ、ムカデが、ゴミムシとチョウに差し換えられたこと。さらに、チョウがなめている角砂糖は、19世紀末期に生産されるようになったもので、ヴィクトリア時代の生活の一部を映すものという内容。

 右下にあるのは「人々のスケッチ」。人々の姿を描いたスケッチと、「ブドウを運ぶ給仕」、『ティギーおばさんのおはなし』に登場するルーシー。「人が描かれているポターのおはなし」と題された解説には、『ピーターラビットのおはなし』に登場するマグレガーさんと、『ティギーおばさんのおはなし』のルーシー。マグレガーさんも、ルーシーも、実際にモデルとなった人物がいたということや、人を描くのは苦労したことなどがポターが編集者のノーマンに宛てた手紙に書き記されていたという内容。

 左上にあるのは「動物のスケッチ」。羊の頭、ツグミの死骸、雌鳥の頭のスケッチ。「好奇心あふれるまなざし」と題された解説には、幼少の頃のポターの楽しみは部屋で動物を飼うこととし、ただ飼うだけにとどまらず、その生き物が亡くなると、骨格をスケッチし骨にラベルをつけて保存したことなど。博物学的な知識と、動物への愛着が作品にも生かされているという内容。

 右上にあるのは「植物のスケッチ」。キンチャヤマイグチ(キノコ左上)、『りすのナトキンのおはなし』の挿絵に登場するキノコ、タイガー・リリーのスケッチ。「絵本の挿絵に役立ったキノコのスケッチ」と題された解説には、キノコを描く際のアドバイスを、キノコに詳しいチャールズ・マッキントッシュより受け、瞬く間に描く技術が向上した点。また『りすのナトキンのおはなし』や、『妖精のキャラバン』にキノコの知識が活かされたという内容。

 資料館の1Fフロアーは、ポターがキノコ研究者として、どのようなきっかけで、またそれら専門的な知識はどのように培われたのかを読み解く場所でもありました。展示されたスケッチ作品の素晴らしさは、レプリカであることを忘れ、その細かい描写に感心してしまい、なかなか前に進めません。

 2Fへと続く階段をのぼった先の通路には、ポターの冬のイラストが展示されていました。

           
 「足跡のあるニアソーリー村の雪景色(1909年)」   「深い雪の下に埋もれた木々と屋根(1909年)」

 
 2Fのフロアに展示されたポターが描いたクリスマスカードと、イギリスのクリスマスの紹介

    
 クリスマスカード(左上)郵便配達のウサギさん 1891年頃 ヒルデスハイマー アンド フォークナー社のクリスマスカード
 クリスマスカード(右下)旅行用の荷物箱の上のベンジャミン・バニー 1891年頃 ヒルデスハイマー アンド フォークナー社のクリスマスカード

 
 クリスマスカード(左上) クリスマスプディングを運ぶ二匹のうさぎ 1891年頃 ヒルデスハイマー アンド フォークナー社のクリスマスカード
 クリスマスカード(右下) 幸福なうさぎ夫婦 1891年頃 ヒルデスハイマー アンド フォークナー社のクリスマスカード

 
 クリスマスカード(上、下) ヒルデスハイマー アンド フォークナー社から出たてんじくねずみのクリスマスカード 1898年頃

 以上、これら6点のイラストは、クリスマスカードとしてポターが描いたもの。

  
 クリスマスカード(写真左)
 イギリスでクリスマスカードが作られたのは1843年。カードを交換する習慣が根付いたのは1870年頃。
 そして、カードによく使われるモチーフは、robin redbreast(コマドリ)。その理由は。。。
 とても興味深い内容で、イギリスでコマドリが愛されているのが分かるような気がします。

 1900年〜1910年代アンティーククリスマスポストカード(写真右)

 
 「ビアトリクス・ポターとクリスマス」
 ビアトリクスの両親、祖父母共に、熱心なユニタリアンの教徒でした。ユニタリアン派は、クリスマスが特別な一日とは認めず、派手なクリスマスの飾りつけはもちろん、プレゼントなどもありません。
 ポターが本格的なクリスマスを過ごしたのは、ウィリアム・ヒーリスと結婚してからのこと。正面のボードには、日記や手紙などから読み解く、ポターが過ごしたクリスマスについて説明がありました。

 正面奥の一段高いところに展示されているのは、「ピーターラビット冬のおはなし」大日本絵画 2009年10月(刊)の、一番最後のページ。もみの木が飛び出る仕掛け絵本

 その両隣に展示されているのは、1890年頃ポターの叔母ルーシー・ロスコウへプレゼントされた4枚の作品、「arrival」、「meal」、「after the meal」、「departure」です。

  
 写真左、右共に、1900年〜1910年代アンティーククリスマスポストカード
 さらにその両隣に展示されていたのは、ちょうど100年前のクリスマスカードです。これらアンティークのクリスマスカードの展示は、こういう機会がないと見ることもかなわない、とても素晴らしかったです。

 
 こちらのディスプレイは、クリスマスの飾り付けを再現したもので、「クリスマスツリーとプレゼント」、「クリスマス料理」、「クリスマスラッカー」についてふれていました。
 でも、それよりもまず目が釘付けになったのは、画面正面右側にある。。。。

 ←画像をクリックすると大きな画像で見られます。

 R.J.Wright作 「The Tailor of Gloucester」のドール、ネズミたち。 左前から淑女ネズミ、右前は紳士ネズミ、そして真ん中奥は仕たて屋ネズミ。
 なんて素晴らしい出来栄えなんでしょう〜。それまで見てきた展示品のことがここできれいさっぱりリセットされました。高級ドールを目の前にしていい歳した(歳は関係ないですね)女性3名、興奮さめやらぬ姿でうっとりと眺める図を想像してください(笑)。
 どれもポケットにおさまるサイズです。絵本から飛び出してきたみたいですね。

  

 
 各家庭に届いたクリスマスカードは、ツリーの周りに、洗濯物を干すロープに引っ掛けるかのように飾り付けるのですね。

 
 「クリスマスツリーとプレゼント」
 クリスマスツリーをクリスマスに飾るという風習は、18世紀ドイツより始まった事。この風習を英国で根付かせたのは、ヴィクトリア女王の夫君アルバート公だった事など。どのようにして英国民にこれらの風習が広がっていたのかを解説していました。

 
 「クリスマスクラッカー」
 クラッカーの形、日本では逆三角形が主流ですが、英国のクラッカー円柱形で形が違います。これはアメリカ式とイギリス式の違いだそうで、派手な音がならず、一人で引っ張るのではなく、二人で引っ張るという違いも。そして、紙で出来た王冠と、ジョークが書かれた紙が必ず入っているとか。こんなエピソードを知るだけでも楽しい気分になりますね。

  
 「グロースターのようふくやさん」ポッター(作) はたのいそこ(訳) 旺文社ジュニア図書館 1971年(刊)
 本の横にさりげなく添えられたクリスマスブーケ。手作りでしょうか?

 いかがでしたでしょうか?大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館がクリスマス特別企画展として開催した「キノコ研究者としてのビアトリクス・ポターとイギリスのクリスマス」。毎年テーマを設けて準備・展示するのは大変なご苦労があると思います。でもこのような企画展を開催していただけることで、またひとつポターワールドの扉を開いていただいたような感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

 
 クリスマス企画展開催中に、来館者にプレゼントされたポター資料館オリジナルクリスマスカード。


*館内は撮影禁止ですが、特別に許可をいただき撮影させていただきました。ありがとうございました。

(2010.1.8 レポート 作成: ラピータ ラピータの部屋コンテンツ)

関連サイト:
大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館: http://www.daito.ac.jp/potter/
埼玉県こども動物自然公園: http://www.aya.or.jp/~sczoo/


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