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大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館
クリスマス特別企画展「傘をもった動物たち」〜ビアトリクス・ポター作品を中心に〜


 「傘をもった動物たち」 なんてチャーミングなタイトルなんでしょう。

 普段何気なく読む動物が登場する物語。「傘」というアイテムに注目して物語を探す旅に出る。そう考えただけでワクワクしませんか?何故そこに注目されたのかも伺いたいと資料館に行ってきました。

   
 12月のビアトリクス・ポター資料館。ガーデンは冬直前の冬眠の季節。名残を惜しむかのようにバラが一輪、その美しさを誇っています。ローズヒップは、鳥たちの冬の大切な食糧。まだ他についばむものがあるのか、たくさんの実をたくわえていました。

 *資料館内は撮影禁止ですが、特別な許可をいただき撮影させていただきました。以下、館内の写真になりますが、一部資料画像もあります。ご了承ください。

 特別企画展は、2Fの研修室にて開催されていて、資料館にて常設展示されている「A Happy Pair(幸福な二人づれ)」(1893)が描かれたボードを中心に、ビアトリクス・ポターが大きな影響を受けたとされるクリフトン・ビンガム(Clifton Bingham)の「Pitter Patter(ピター・パター)」(1891年)の表紙を紹介。

 
 どちらも表紙に同じ色の大きな傘が描かれていて、傘のデザインも同じ。
 この類似するふたつの挿絵の関係については、いずれ研究により明らかにされるとも記してありました。

 また、クリフトン・ビンガムと共に、ビアトリクス・ポターが影響を受けた人物として、ヘレン・バナマン(Helen Bannerman)の作品「The Story of Little Black Sambo(ちびくろさんぼのおはなし)」(1899)もありました。影響を受けた考えられている部分として、手のひらサイズの本の大きさ、The Story of〜で始まるタイトル、物語の書き出しOnce upon time there〜など。

 
 主人公さんぼは、上等な服と傘を持ち散歩に出かけます。途中トラに襲われ、自分の身に着けていたものをひとつずつトラに渡していく物語。最後に残った傘をどうやってトラに持たせるのかといったところでは、しっぽに結わえるという機転を利かせる場面。恐ろしいトラも、傘を持った途端チャーミングになり、笑みがこぼれるから不思議ですね。

 今度はビアトリクス・ポターに影響を受けた挿絵が画ハリー・ラウントリー、児童文学者モーリス・センダックの傘を持つ動物たちも紹介されていました。

  
 モーリス・センダック(Maurice Sendak)「Pleasant Fieldmouse」に登場する傘をさしたマウス。
 ハリー・ラウントリー(Harry Rountree)「Bunny Boy and his Magic Umbrella)

 
 クニヒト&ケネディ、マーガレット・テンペスト、ルイス・ウェインのポストカード

 この中で、マーガレット・テンペストのポストカードが、特別企画展のチラシにも掲載されていましたが、説明にもテンペストは、ビアトリス・ポターより多大な影響を受けているとありました。

   
 私も偶然ながらいただいたポストカードの中に、マーガレット・テンペストが3作品あったので紹介します。
 「ビアトリクス・ポターの作風に似ているから」といただいたのですが、やはり影響を受けられていたのですね。

 
 ビアトリクス・ポターの作品の中から、傘をもった動物たちへと目を移すと、『ピーターラビットのおはなし』の傘をもってでかけるおかあさん、『パイがふたつあったおはなし』の花束と傘を手にもつダッチェス、『ひげのサムエルのおはなし』のリビーは、こねこのトムのお母さんタビタにイーストを借りにやってきます。こうして見ると、出かける際は、雨が降っていなくてもおしゃれなアイテムとして傘をもつのは英国人のマナーのひとつなんですね。それが物語にも描かれているのかもしれません。

 そして、リビーはひげのサムエルを追い払うための武器として、傘を手に持ったまま物語は進みます。とっさの身を守るアイテムとして頑丈な作りなのかもしれません。

 『カルアシ・チミーのおはなし』で描かれている傘については、 「カルアシ・チミートとカアチャンの夫婦ふたりの信頼や愛情を表す重要なモチーフになっている」と解説にありました。

  

 『まちねずみジョニーのおはなし』の田舎に暮らすチミー・ウィリーは、植物の葉が傘代わり。田舎の豊かな自然を見事に表現しています。『セシリ・パセリのわらべうた』、『ずるいねこのおはなし』にも傘をもった動物たちが登場します。

 その他にもビアトリクス・ポターが幼少期に描いたスケッチや、叔母のロスコー夫人に贈った「クリスマス・パーティ」の水彩画作品にスケッチ、ポター自身が撮影された写真からも傘をテーマに紹介されていました。

 ビアトリクス・ポター以外にも、表紙に傘が描かれている児童文学書の紹介がありましたので、タイトルだけでも紹介しておきます。
 ジャック・プレラツキー&キャリー・バーガー「大きな傘を差したゾウさんを見てごらん」(2006)
 ディーター・シューベルト「アンブレラ」(2011)
 ジョン・ミュース「パンダのシズカくん」(2005)
 戸田和代&よしおかひろこ「かえるのかさやさん」(2003)
 ガース・ウィリアムズ「青い傘の下で」(1990)
 ハンリク・ドレッシャー「黄色のカサ」(1987)
 オーガスティン・マグレガー「緑のコウモリ傘」(1950)
 ウィリアム・ボイス「うさぎのこうもり傘」(1955)
 ロバート・ブライト「あかいかさ」(1959)
 リチャード・スキャリー「ぼくとうさぎ」(1963)

Peter Gardenの管理人、なっつさんが資料館と特別展示の様子を動画撮影してくださいました。
雰囲気が何よりも素晴らしい資料館は、こうして動画で見ていただくのが一番分かりやすいと思います。
ぜひご覧ください。

 
 「傘をもった動物たち」をテーマにしたクリスマス企画展、本当に楽しかったです。「傘」を描くことにより、私たち読者に与える印象をより深くする作者の意図が隠れているということも、この企画展にて知りました。奥深い世界がそこには存在して、読者の心をつかんで離さない理由がまたひとつ判明しました。このような企画展は、開催の挨拶にもありましたが、大東文化大学の学生さんによる研究の賜物だそうです。今後も楽しみにしております。

 報告がすっかり遅くなりましたが、以上で報告レポートおわります。ご覧いただきましてありがとうございました。

(2012.12.28 レポート 作成: ラピータ ラピータの部屋コンテンツ)

関連サイト:
大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館  http://www.daito.ac.jp/potter/


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