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大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館 開館7周年企画 クリスマス特別企画展
「ビアトリクス・ポターとマザーグースの世界 〜作品の中のわらべ唄を探して〜」


開催期間:2013年11月19日〜12月28日まで
開催場所:埼玉県こども動物自然公園内、ビアトリクス・ポター資料館
 大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館で開催される、毎年恒例のクリスマス企画展。今回は「ビアトリクス・ポターとマザーグースの世界〜作品の中のわらべ唄を探して〜」がテーマです。

 ビアトリクス・ポターの作品にちりばめられたマザーグースとは。。。

 と、その前に、来年の主役に会いに行きました。
 
 モデルはムサシ君(13歳)

 来年の干支は馬ということで、動物園のポニー・乗馬コーナーに立ち寄ったら、「ウマと年賀状写真を撮ろう」とこのような撮影スポットがありました。モデルのムサシ君はとってもおとなしくて、家族と訪れた方々は大喜びで記念撮影されていました。

  
 訪れたのは12月でしたが、資料館前のガーデンで今年最後のバラが咲いていました。

  
 資料館に到着し、写真を撮影していると、ポター資料館の学芸員さんが庭の方へ出ていらして、「中に入られますか?」と声をかけていただきました。

 お言葉に甘えて、初めて野菜畑の方にも入らせていただきました。学芸員さんの許可をいただければ、中に入らせていただくことも可能だそうです。詳しくは学芸員さんにお尋ねください。
 野菜畑にあるマグレガーさんの案山子越しにポター資料館を見るのも新鮮で良い眺めです。

 もう一枚の写真は、ピーターラビットの森から11月1日に撮影したもの。ポター資料館の全景をバックに最高の写真スポットです。

  
 資料館内部は撮影禁止ですが、特別な許可をいただき撮影させていただております。ご了承ください。

 それでは、いよいよクリスマス企画展「ビアトリクス・ポターとマザーグースの世界〜作品の中のわらべ唄を探して〜」が展示されている第4展示室へ。

 いったいビアトリクス・ポターの作品とマザーグースがどのように結びつくのでしょうか?

 日本語に翻訳されたおはなしを読む限り、一見してこの部分はマザーグースだからと意識して読み込まれる方は少ないと思います。特に私達の学生時代は、受験勉強主体の英語教育だったため、マザーグースを教材として取り上げて勉強した記憶もないし、本でふれた記憶もなし。

 わらべ唄で有名な「ロンドン橋」とか、教えてもらった記憶はあるけれど、マザーグースとして教わったかしら?と首をかしげてしまいます。

 しかし、

 「英国、米国を中心とした英語圏の文学者たちは誰でも、多かれ少なかれ、聖書、ショイクスピア、マザーグース(英国ではナーサリーライム)に影響を受けていると言われます」

 と、今回の企画展にあたり「はじめに」の挨拶でこのようにご紹介があり、

 「ランドルフ・コールデコット、ケイト・グリーナウェイ、ビアトリクス・ポターといった児童文学者は、際だってマザーグースを作品の中にちりばめています。今年度に企画展では、ビアトリクス・ポターの作品に登場するマザーグースに着目しました」

 と、企画展の趣旨を紹介されていました。

 日本語翻訳ではなく、原文で作品を読むと、ビアトリクス・ポターのおはなしは、マザーグースと密接な関係があり、そのおかげでより魅力的な作品となったと言っても過言でないほど、深くおはなしに染みこんでいるのが理解できます。

 
 ビアトリクス・ポターが生きていた頃に出版されたマザーグースの本の紹介です。

 英国で「Nursery Rhymes(ナーサリーライム)」という言葉の初出は、1842年フレデリィック・ウォーン社より出版された「The Nursery Rhymes of Englnd」、この書籍であろうと言われているそうです。展示されていたのは、1886年に出版された第5刷です。

  
 ケイト・グリナーウェイの「Mother Goose(マザーグース)1890年初版

 ウォルター・クレイン「Baby's Opera」
 歌って演奏できるように掲載されているマザーグースを楽譜付きで紹介。1877年初版

  
 
 マザーグースについて調べたい時に、まず最初に調べる辞典として紹介されたのは、
 「The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes 」(1951)
 アイオナ&ピータ・オピー夫妻が編纂したもので、全部で500編以上のマザーグースが収められています。

 その次に調べる辞典として、
 「The Annotated Mother Goose」(1962)
 W.S.ベアリングールド&C.ベアリングールドによるもので、全部で880編ほどのマザーグースが収録されています。

 さて、改めて今回の企画展の第4展示室の写真をご覧ください。書棚の上だけでなく、手前、それから側面の壁一面にもボードがずらりと並んでいます。

 これらボードのひとつ、ひとつは、ビアトリクス・ポターのおはなしにちりばめられたマザーグースの紹介です。

 そして今回の企画展だけで紹介しきれなかったため、次年度の企画展に、『グロースターの仕たて屋』『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』『アプリイ・ダプリイのわらべうた』『セシリ・パセリのわらべうた』等が取り上げられる予定だそうです。

 では、今回紹介されたのは、私家版「ピーターラビットのおはなし」、『こねこのトムのおはなし』、『のねずみチュウチュウおくさんのおはなし』、『ベンジャミン バニーのおはなし』、『りすのナトキンのおはなし』、『2ひきのわるいねずみのおはなし』、『カルアシ・チミーのおはなし』、『こぶたのピグリンのおはなし』です。

 一番分かりやすくて有名なマザーグースとして教えていただいたのが、『りすのナトキンのおはなし』に出てくる「Humpty Dumpty」というマザーグースです。

 少し紹介してみたいと思います。

 ボードにかかれている文字を書きうつしました。
 分かりやすいように文字の色を変えてみました。
 赤文字は、『りすのナトキンのおはなし』より。青文字は参考文献より、マザーグースのオリジナルです。
◎The Tale of Squirrel Nutkin(1903)『りすのナトキンのおはなし』

  Humpty Dumpty lied in the beck、
  With a white counterpane round his neck,
  Forty doctors and forty wrights,
  Cannot put Humpty Dumpty to rights!

  ずんぐりむっくり とこのなか、
  しろいふとんかけ おやすみだ。
  いしゃが 40にんかかっても、
  ずんぐりむっくりは なおせない!

 「The Tale of Squirrel Nutkin(りすのナトキンのおはなし)」より
 いしいももこ(訳)

  Humpty Dumpty sat on a wall,
  Humpty Dumpty had a great fall.
  All the king's horses, and all the king's men,
  Couldn't put Humpty together again.

  ハンプティ・ダンプティ 塀の上に座ってた
  ハンプティ・ダンプティ 落っこちた
  王様の馬だって、王様の兵隊だって
  ハンプティ・ダンプティを基には戻せない

 企画展で展示されている参照書籍より

謎かけ歌。答えは「卵egg」これはあまりに有名になってしまったので、謎かけ歌ではなくなった。


 「マザーグースはどこが面白いのか?」を、解説していただいたものの自分の中では消化しきれず付け焼刃の知識で恐縮ですが、

 マザーグースは、韻を踏むのが最大の魅力で、先頭もしくは行末の発音を揃えることで、リズムが生まれ、読むと楽しくなるというのが特徴だそうです。言葉の意味よりも、単語の発音を重視するため、意味はあまり深く考えずに音を楽しめばいいようです。

 ハンプティ・ダンプティは解説にもあるとおり、謎かけ歌だったのですが、答えは誰もが知っているあまりに有名なマザーグースになってしまったため、謎かけ歌として通用しなくなったそうです。

 行末の単語に注目してもらうと、「wall」と「fall」、「men」と「again」が韻を踏んでます。

 『りすのナトキンのおはなし』では、ハンプティ・ダンプティのような謎かけ歌がたくさん登場しますね。これらすべてマザーグースで、おはなしに深みを足しています。

 このようなおはなしにあるマザーグースについて解説されているボードが壁一面にあり、ひとつひとつ見ているだけでわくわくする内容なんです。単語が発音できれば、さらにその音の面白さが体験できるし、マザーグースのメロディを覚えていれば、もっと楽しみが広がります。

 メロディということでひとつ書き加えたいのが、『こぶたのピグリン・ブランドのおはなし』のマザーグースについてです。こちらのおはなしにも、マザーグースがたくさん出てきますね。ピグリンとアレクサンダーが市へと向う途中に、急いでといって注意深く初めて向う市へと行かなければならないのに、慎重なピグリンに対し、アレキサンダーはのんきに深く考え無しに行動する性格の対比を、道の端から端へと倍の労力をかけて歩くどうしょうもないといった。

 その時にアレクサンダーが口ずさむのがマザーグース。楽しんでいる姿が伝わってきます。あまりにアレクサンダーがふざけるので、ピグリンが怒ってしかりつけますが、機嫌を直して仲直りする際もマザーグースを口ずさむのです。

 そんなピグリンとアレクサンダーが一緒に口ずさむマザーグースが、このおはなしの内容を暗示するかのようなものになっています。それがこちらです。


  Tom, Tom, the piere's son,
  stole a pig and away he ran!
  But all the tune that he could play,
  was 'Over the hills and far away!'


  トム トム ふえふきのむすこ
  ぶたをぬすんでにげたとさ
  トムにふけたのは たったの1きょく
  ”おかをこえて はるかなくにへ!”


 「The Tale of Pigling Bland(こぶたのピグリン・ブランドのおはなし)」より いしいももこ(訳)

 おはなしに出てくるマザーグースは、以下のふたつのマザーグースをひとつにしたもので、1行目と2行目は「トム、トム笛吹きの息子」の部分で、3行目と4行目は「トムは笛吹きの息子」の部分が、「こぶたのピグリン・ブランドのおはなし」の中ではそれがひとつのマザーグースとなりました。

 タイトル「Tom, Tom the piper's son(トム、トム笛吹きの息子)」
  Tom, Tom the piper's son,
  Stole a pig and away he ran;
  The pig was eat
  And Tom was beat,
  And Tom went howling down the street.


  トム、トム、笛吹きの息子
  豚を盗んで逃げてった
  豚は食べられ
  トムはたたかれ
  泣いて通りをかけてった


 タイトル「Tom, he was a piper's son(トムは笛吹きの息子)」
  Tom, he was a piper's son,
  He learned to play when he was young,
  And all the tune that he could play
  Was, "Over the hills and far away."


  トムは 笛吹きの息子
  子供の時に 笛を習った
  トムに吹ける 曲は ただひとつ
  「丘をこえこえ どこまでも」


 
 「Beatrix Potter's Nursery Rhyme Book(ビアトリクス・ポターのわらべうた)」
 1995年(刊)こちらは改訂版2001年(刊)Frederick Warne社

 こちらの書籍は、ビアトリクス・ポターのおはなしに出てくるマザーグースをまとめたもので、マザーグースのCDも付いています。このCDの25曲目に「Tom, Tom the piper's son」が入っているのですが、そのマザーグースはとても楽しい仕掛けがあります。

 といいますのも、
 タイトル「Tom, Tom the piper's son(トム、トム笛吹きの息子)」と、
 タイトル「Tom, he was a piper's son(トムは笛吹きの息子)」

 それぞれ違うマザーグースなので、メロディもそれぞれ相違しますが、それがまるでひとつのマザーグースのように、2曲の掛け合いでひとつのマザーグースのように収録されているのです。これがまたぴったりとおさまっているので、本当に楽しいマザーグースになってます。

 こんな素敵なアレンジができるのも、ビアトリクス・ポターが「こぶたのピグリン・ブランドのおはなし」で、まるでひとつのマザーグースのようにおはなしに出てくるからですものね。

 何気なくおはなしを読む場合と、マザーグースの楽しさ、韻を踏むリズム感、そしてメロディ、これらを知って読むのでは、楽しさが2倍、3倍楽しくなることは間違いなしです。

 日本人の英語が苦手な私にとって、マザーグースを理解するのは無理って思ったけれど、今回の企画展を通じて、もっと知りたいって思うようになりました。みなさんもどうぞじっくりご覧になてくださいね。ここに紹介したのはほんの一部だけですし、まだ来年もありますから〜。

 今回のクリスマス企画展にあたり、2階の映像視聴室にあるディスプレイケースに、ピーターラビットお茶会グループ有志によるグッズ展示をさせていただくこととなりました。

 クリスマス企画展ということで、

 「テーマ:ビアトリクス・ポターが描いたクリスマス・カードのデザイン

 1932年、ビアトリクス・ポターは、ICAA(団体疾病児童援助)の基金とするため、クリスマス・カードにイラストを提供しました。このイラストのオリジナルは、ビアトリクス・ポター資料館の第2展示室に展示されています。

 イラストのデザインは、クリスマス・ツリーを中心に、ピーターラビットと仲間たちが輪になり、クリスマスをお祝いしている光景。このデザインを基に商品化されたものを紹介致します。」


 と、アイデアを振り絞り、このアイデアに賛同してくださった方々が各々のコレクションを貸出ししてくださいました。

 

  

 

 商品化された絵柄のオリジナルが、自分の目で見られるという資料館ならではの素晴らしい特典と、その絵柄の魅力と、チャーミングさを全く損なうことなく商品化されたグッズたちをぜひご覧くださいね。

 大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館で開催されているクリスマス企画展「ビアトリクス・ポターとマザーグースの世界〜作品の中のわらべ唄を探して〜」についてレポートしました。この企画展は、12月28日までです。もしまだご覧になられてない方はお急ぎくださいね。都会のイルミネーションも素敵ですが、ピーターとその仲間たちのオーナメントクリスマスツリーも素敵ですよ。

 

(2013.12.16 レポート 作成: ラピータ ラピータの部屋コンテンツ)

関連サイト:
大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館  http://www.daito.ac.jp/potter/
Copyright(c)1996 ラピータの部屋 all rights reserved.

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