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大東文化大学 ビアトリクス・ポター資料館 開館8周年企画 クリスマス特別企画展
「ビアトリクス・ポターとマザーグースの世界」
〜『アプリイ・ダプリイのわらべうた』と『セシリ・パセリのわらべうた』を中心に〜


開催期間:2014年11月18日〜12月28日
開催場所:埼玉県こども動物自然公園内、ビアトリクス・ポター資料館内にて
 

 大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館で開催される、毎年恒例のクリスマス特別企画展。

前回に引き続き「ビアトリクス・ポターとマザーグースの世界」と題し、『アプリイ・ダプリイのわらべうた』と『セシリ・パセリのわらべうた』の2冊を中心にした企画展が開催されました。

 この2冊は、ビアトリクス・ポターが大好きなわらべうた(アメリカではマザーグース、英国ではナーサリーライムのこと)だけで構成されています。わらべうたとは、同じ音を持つ語句やフレーズを決まった位置(頭だったりお尻だったり)に配置する決まりがあり、これによって言葉のリズムが生まれ、想像力が豊かになるという魅力を秘めています。

 そんな魅力的な押韻詩が2冊合わせて15編掲載されています。

 出版されたのは、『アプリイ・ダプリイのわらべうた』が1917年、『セシリ・パセリのわらべうた』が1922年と、『ピーターラビットのおはなし』が1902年に出版されてから随分と時が経ちましたが、ビアトリクスが絵本を出版する以前から描いていたものもあり、長い年月を経て作品となり世にだされたことが、様々な記録から知ることができます。

 この企画展では、これら2つの作品に収められた押韻詩のすべてをパネルにて解説していました。そのうち6編は、ビアトリクス・ポターが独自に創作したオリジナルの押韻詩とありました。

 以下の画像は、特別企画展で展示されていたパネルの一部です。館内は撮影禁止ですが、特別な許可をいただき撮影させていただきました。どうかご了承ください。
  
 1917年『アプリイ・ダプリイのわらべうた』

 7編掲載されたわらべうたの内、6編がビアトリクス・ポター本人が創作したものです。
 口絵として描かれた「コートを着たうさぎの紳士」の作品(パネル左側の左下)は、ビアトリクスの家庭教師だったアニー・ムーアの子供たちへ、1894年に贈ったクリスマスカードに描かれていたものです。

 タイトルにもなった「アプリイ・ダプリイのわらべうた」は、ビアトリクスが創作したもので、アプリイ・ダプリイという名前の茶色のネズミがパイが大好きと締めくくられていますが、「アップル・ダップルApple Dapple」という名前のパイが実際にあるそうです。

 ネットで作り方を調べたところによると、アップルパイを作る要領で、リンゴを投入し、そこへナッツ類も一緒に入れて焼き上げ、最後にブラウンシュガーでパイ全体をコーティングしたようなものでした。甘さのレベルでいうと、砂糖のコーティングという時点で最高ランクかもしれません。アプリイ・ダプリイの大好物なんですね。


  
 1922年『セシリ・パセリのわらべうた』・・・

 『アプリイ・ダプリイのわらべうた』の続編として出版されたもので、伝統のある英国圏の人ならだれもが知っている押韻詩を、固有名詞などを変えて収められました。

 口絵は、「暖炉の前でくつろぐうさぎの紳士たち」の作品(パネル左側の左下)ですが、これは『アプリイ・ダプリイのわらべうた』と同様に、ビアトリクスの家庭教師だったアニー・ムーアの子供たちへプレゼントした作品を参考に書き直したものだそうです。

 本の解説にもありますが、献辞の「ニュージーランドのピーターへ捧ぐ」とあるのは、ニュージーランドに住んでいたビアリクスの読者の甥で、幼くして両親をなくしたピーター・タッキーを励ますために、このような献辞になったそうです。

 タイトルにもなった「セシリ・パセリのわらべうた」は、「穴蔵の中にいるブルーベティちゃん」というわらべうたの固有名詞を変えたものです。

 「ブルーベティ(Little Blue Betty)」のベティはビールの泡のことで、穴蔵(den)はビールの樽のこと。

 ブルーベティがセシリ・パセリ(Cecily Parsley)という名のうさぎに置き換わり、
 穴蔵は宿屋(pen)となりました。

 英語のオリジナルのナーサリーライムを見ながらでないと半分も伝わらないかもしれませんが、大変興味深かったのが、セシリ・パセリという名前です。

 セシリは、日本でスイートシスリー(Sweet Cecily)というセリ科の植物でハーブの一種。
 パセリは日本でお馴染みの(Parsley)セリ科の植物でお腹の調子を整えるハーブの一種。

 パネルの解説には、セシリ・パセリは植物の名前から来ていると考えられているとありました。

 ここから私の勝手な想像ですが、「セシリ・パセリ」という植物の名前にしようと思ったのは、ビアトリクスはそこにどういう意味を含ませたのだろうか?と考えました。

 このわらべうたは、宿屋のおかみさんであるセシリ・パセリは逃げ出したと締めくくられます。

 
 『セシリ・パセリのわらべうた』より

 実は逃げ出したんじゃなくて、セシリ・パセリは植物の妖精だったじゃないだろうか?宿屋のおかみとして美味しいビールを作っていたけれど、また植物の姿に戻っていったと、という風に想像を膨らませると、この挿絵に描かれた森の植物があまりにも美しく活き活きと描かれている様が妙に納得がいくというか、そこまで想像が広がりました。

 勝手な想像にお付き合いいただき恐縮ですが、ここにこうして特別企画展で解説していただいたおかげで、ただ読むだけでは思いもしなかったことにまで想像が広がり楽しいです。

 
 『セシリ・パセリのわらべうた』より

 実際のところ、セシリ・パセリは荷物をまとめて穴の中へ急いで逃げるという答えが、表紙に描かれてはいるんですけどね。

 それはさておき、作品の解説はもとより、このような機会はもっと増やしていただき、私達ビアトリクス・ポターファンを楽しませていただきたいと思いました。

 パネルのほんの一部だけですが、この企画展の感想と共に紹介させていただきました。


 さて、今回のクリスマス企画展にあたり、2階の映像視聴室にあるディスプレイケースに、昨年に引き続きピーターラビットお茶会グループ有志によるグッズ展示をさせていただくこととなりました。

 今回のグッズ展示のテーマは、 『グロースターの仕たて屋』のお話の挿絵を商品化、また手作りしたもの」です。

 日本のピーターラビットのグッズ展開は、ピーターラビットが中心で、グロースターの関連商品は本当に少ないのが現状です。しかし、お話にあるように愛らしいネズミがチクチクと細かい刺繍をする姿に、手作りされる方が自分の姿を重ね合わせ、お話の世界へと引き込まれる人気の高い作品。ビアトリクス本人も「小さな本たちのなかで一番のお気に入り」と語るほど好きな作品でした。

 
 こちらが『グロースターの仕たて屋』をテーマにしたグッズ展示です。
 大東文化大学の学生さんたち、なんでもこれから学芸員を目指す方々が、どのように配置すればよいかを考え、また貴重なグッズなので取扱い注意の指示のもと、「緊張する〜」と言いながらも素晴らしいレイアウトで展示していただきました。

 展示させていただいたフィギュアや、記念プレート、それからR.JOHN.WRIGHT製のドールなど、どれもこれも貴重なものばかりだったのですが、コレクターの方のご協力のもと(私のものはほんの一部で恐縮です)展示させていただきました。

 それからビアトリクス・ポターの描く作品に魅せられ、その世界観を大切に、こんなグッズがあったら良いのにがコンセプトの「PeterGarden」なっつさんの手作り作品も展示させていただきました。

  
 資料館前に咲いていたチェリーセージ ホットリップス(左)と、アメジストセージ(右)と、ダリア(下)

 
 もっと早くレポートを作成すればよかったのですが、諸事情でなかなか筆をとることができずに申し訳ありませんでした。ご紹介させていただいた資料館内部の写真は、特別な許可をいただき撮影させていただきました。どうぞご了承ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(2015.1.27 レポート 作成: ラピータ ラピータの部屋コンテンツ)

関連サイト:
大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館  http://www.daito.ac.jp/potter/
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