〜〜〜 ビアトリクス・ポターの聖地を巡る旅(2018年6月) 〜〜〜
4日目(6/20) 湖水地方 ボウネス・オン・ウィンダミア〜アンブルサイド〜グラスミア〜ダーウェント湖〜ニューランズ・バレー
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▼牧場経営のターニングポイントとなったトラウトベック・パーク農場 湖水地方に滞在し3日目の朝(旅は4日目)を迎えました。2日目の朝は、朝食リクエストを前日の夜までに出し忘れ慌てましたが、3日目はじっくりメニューを選んでリクエストしたので、朝から盛りだくさんです。 ![]() ベーコン、マッシュルーム、ベイクドビーンズ、グリルトマト、スクランブルエッグ、ヨーグルト、ジュース、コーヒー、パン。パンは、ホワイトかもしくはブラウン、それともその両方のミックスと選択できました。 天気は今にも雨が降りだしそうな曇り空の中、最初の目的地のトラウトベック・パーク農場へ向かいました。ボウネスの宿から車で約20分ほどでした。 この農場は、ビアトリクスが1923年、57歳の時に、敷地約1900エーカー(東京ドーム164個分)を取得し、湖水地方で最大級となる農場の地主となりました。これまでは、ヒルトップ農場で農場経営のノウハウを学ぶ日々だったビアトリクス。そしてこの広大な敷地を得ることにより、彼女のそれまでの農場経営のキャリアを、さらなる高みへと引き上げた場所となりました。 大規模農場となると、これまでのやり方と同じでは通用しません。また平地ではなく気温差が激しい高原牧場の難しさ、牧羊夫も優秀な人材でなければ務まりません。ビアトリクスの遺骨を散骨したことで知られているトム・ストーリーは、トラウトベック・パーク農場の牧羊夫として1926年に雇われ、その後17年間苦楽を共に過ごした仲間となりました。 私達は、このトラウトベック・パーク農場こそが、彼女にとって農場経営をさらに面白くさせた、人生におけるターニングポイントのひとつでもあるように感じていたので、是非ともこの目でどのような場所なのか見ておきたいと思ったのです。 問題は場所でした。観光スポットではありませんので、農場近くで見学するのは不可能です。もしできるだけ近くで見たかったら、徒歩でフットパスを利用すれば、もう少し近くで見ることは可能のようでした。しかし、徒歩となると半日はかかりそうです。不安と期待が入り混じった中、一度はそこに行くのを諦めましたが、「憧れの湖水地方をとことん堪能!北部10湖巡りツアー」というミニバスツアーで、カークストン峠に行く途中に、トラウトベック・パーク農場が見える場所でバスを停めて、写真撮影することができたという情報を友人より聞きつけ、それもそのツアーを主催しているのは、私達が利用していたマウンテンゴート社でした。 こうして私達も無事に、カークストン峠に続く道路の途中にある路側帯にバスを停め、バスの乗り降りする際に十分注意するよう言われましたが、無事に高台より見ることができました。 ![]() 朝靄がたちこめるトラウトベック・パーク農場 ![]() 手前に建ち並ぶ建物は、必要に応じてビアトリクスが増やしていった母屋となっているコテージ、羊飼いのための宿泊施設や、犬舎や恐らく納屋なども。 ![]() 円筒形の煙突、縦と横に仕切りのある窓もそのまま保存されているようです。 ビアトリクスは、ここでの農場経営が楽しく、「神秘的で静寂に満ち、ささやくようなこだまが聞こえる場所」としました。 ▼トラウトベック・パーク農場は『妖精のキャラバン』の舞台 ![]() 『妖精のキャラバン』ビアトリクス・ポター(著)久野暁子(訳)福音館書店(刊)より 石造りのコテージを描いた挿絵は、『妖精のキャラバン』に登場します。おはなしでは「日の当たる開けた牧草地は、とても気持ちがいいものです。薄暗い林の中にいた後ではなおのことです。牛や羊がのんびりと草を食み、子羊が飛び跳ねています。」と、この農場での様子を表現しました。 ![]() 建物の後ろにそびえるこんもりとした山は、「Tongue」と呼ばれる古北欧語の「tunga」が語源の言葉で、2つの谷の間にある卓状地(楯状地のうえに地層が重なる台地 テーブルランド)という意味です。母屋から一気に地形が盛り上がる様が、実際で見た方がよりリアルに伝わってきました。 カークストン峠へと向かう道路は、湖水地方の峠道の中でも1,2位を争うほどの標高差がある峠道なので、この農場はその手前にあり、かなりの高さより農場を見下ろしたことになります。こうして短い時間でしたが、車で近づけるぎりぎりの場所で、トラウトベック・パーク農場を見ることができました。 ▼ビアトリクスも農場で飼育したギャロウェイ種の牛 次に少し宿のあるボウネスの方向へ戻ることになりますが、私も初めて訪れるレイ・カースルへ向かいました。その道中、ビアトリクスが飼育に夢中になったギャロウェイ種の牛がいました。主にスコットランドの低地特産種として飼育された角無し種で、南西部のギャロウェイに古い起源をもつ牛です。 ビアトリクスは、弟のバートラムが結婚後スコットランドに移り住み、農場経営していたこともあり、この牛の姿の美しさをもちろんのこと、痩せた土壌への対応力もあることを知り、ビアトリクスもヒルトップ農場で飼育した牛です。 ![]() 運転手のデレックが道端に車を停め、「ご覧、ギャロウェイだよ」と教えてくれたので、これがギャロウェイなんだと分かった次第です。デレックが「moo, moo(モーモー)」と呼びかると、こっちを向いてくれました。お腹に白い腹巻しているのような模様がとても可愛いですね。バクに似てる? 弱い雨が降ったりやんだりの空模様は相変わらずでしたが、次の目的地レイカースルまで車で40分ほどでした。 |
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| 朝食後最初の目的地トラウトベック・パーク農場へ(完) | |
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▼湖水地方で初めて訪れた地、レイ・カースルへ 次の目的地レイ・カースルは、湖水地方で最大の湖、ウィンダミアの北西の湖畔にあります。前日、ヒルトップ農場へ向かう道中で、一瞬だけレイカースルが見えました。 ![]() こちらが一瞬だけ見えたレイカースル。手前がウィンダミア湖で、その先の森に囲まれ要塞のような建物の塔の一部が見えます。この辺りの森は、地名にちなみ「ワットバロウの森(Watbarrow Wood)」と呼ばれています。 レイ・カースル(Wray Castle)は、ビアトリクスが湖水地方に初めて訪れた1882年、16歳の時に滞在した屋敷です。その屋敷は、18世紀後半から19世紀にかけて流行ったゴシック・リバイバル建築(Gothic Revival style)で、1840年リヴァプールの医師ジェイムズ・ドーソンが、妻の父親のジン製造で得た利益で建てました。 妻の父、ロバート・プレストンは、リヴァプールでドライジン(蒸留ジン)を製造し、その蒸留所があった町の通りの名前に、ジンには欠かせないボタニカルであるジュニパー(西洋杜松)にちなんで、「ジュニパー通り」と名付けられるほど繁栄しました。肝心の妻マーガレットは、夫の建てたレイカースルを見るなり二度と足を踏み入れることはなかったそうです。 ビアトリクスは、建物の奇抜さよりも、室内のアンティークな家具に魅せられ、もし自分が家を建てたらこのような家具を並べたいと、書斎や屋敷内の廊下をスケッチし魅せられました。 さて私達は、レイカースルで行うミッションがありました。ビアトリクスがレイカースルの前で撮影した有名な記念写真と同じ位置で撮影を行うこと。私も初めて訪れる場所なので、恐らくこの辺りだろうと予習はしていたものの自信はありません。いざ撮影しようとしましたら、あろうことか車が1台横づけされていて、どうしても写りこんでしまいます。脚立を屋根に積んだ関係者の方かと思い、車を動かしてもらえるよう頼んでみましたが、こっちも困ると相手にしてくれません。みんなで「ちょっとぐらいどかしてくれてもいいのに」とブーブー言いながら(笑)撮影しました。 ![]() 撮影位置は、ビアトリクスの記念写真と見比べると、もう少し後ろにさがって撮影した方が良かったみたいです。 ![]() こちらは正面入口。威圧的で圧倒的な存在感のある建物は、真ん中にある背の高い塔が中心となりその周りに城郭風な屋根が並び、その周りに矢を入れる切れ目の入った小塔が覆っていて、窓は垂直にスライド開閉する落とし格子の窓で、印象的なコントラストを与えています。 ![]() 敷地面積は、830エーカー(東京ドーム71個分)で、ウィンダミア湖に向かって森が広がり、反対側の敷地は牧草地が広がっていました。周囲はフットパスが完備されていて、ウィンダミア湖までの散策も楽しめます。 ![]() この先は入場料が必要 大人9.6ポンド。建物の内部は、長い間子ども為の施設として利用され、一般開放されていませんでした。現在は内部も見学できますが、ビアトリクスが魅せられた調度品など、子どもの室内遊び場(遊具)となっているため撤去されました。装飾を施した柱や、高い位置に張り出した天井の梁、建物の構造物はその当時のまま見られます。 ![]() そしてウィンダミア湖を一望できるこの景色も、建物の上階の方がより全体を見渡せると思います。 ▼運命の出会いをした聖マーガレット教会 ![]() 私達は、もうひとつのミッションのために、小雨降る中をミニバスで通り過ぎた最初のゲートへ向かって、ぞろぞろと歩きだしました。 レイカースルに行ってみて分かったお勧め見学コースは、まずはレイカースルのゲート前で停車し、ゲートの右隣りにある聖マーガレット教会を見学後、再びバスに乗り込みレイカースルへ。このように見学すれば、ゲートからレイカースルまでの約1キロ(片道 徒歩10分から15分)の往復をカットできます。まさか敷地内がこんなに広いとは想像もしていなかった。雨さえ降ってなければ、牧草地を横目に見ながら楽しいお散歩になったかもしれませんが。 聖マーガレット教会は、ビアトリクスが初めて湖水地方に滞在する5年前、1877年にロウレイ(Low Wray)区の教区牧師として、ハードウィック・ロンズリーが赴任しました。ローンズリー牧師は、湖水地方の美しい自然に魅了され、自然景観保護のための活動を行い、やがてナショナルトラストの創設者として、永遠に語り継がれる存在となりました。そんな運命的とも言えるビアトリクスと、ローンズリー牧師が出会った場所こそがレイカースルでした。 河野先生の書籍「ピーターラビットの世界へ ビアトリクス・ポターのすべて」の第7章で紹介されている聖マーガレット教会について、「レイ・カースルに訪れるときは、ぜひとも訪れていただきたいスポットです」とあります。 ![]() 聖マーガレット教会。現在は、建物の保存がされているものの、利用はされておらず、外観を見るだけです。見学者は、私達の他に先に来ていたピーターたちのようです。「ガサッ」と音がしたので振り向くと、野ウサギが慌てて走り去って行きました。 ![]() 教会の入口に、ローンズリー牧師についてのパネルがひっそりと飾られています。 ![]() お散歩中に見つけたタマフジウツギ(Orange Ball Tree)。黄金色のボールのようなオレンジの花をたくさん咲かせていました。 ![]() ヤマヤグルマギク(Montane star thistle)。名前の通り高地に咲く花。 予定通り9時40分に到着し、ふたつのミッションを成功させ、10時30分に次の目的地であるアンブルサイドへ移動を開始しました。予定外だったのは天気だけ。絶対に晴と信じていたのに、これだけはどうしようもないことですけれどもね。 |
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| ウィンダミア湖畔にあるレイ・カースルへ(完) | |
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